『音声言語VI』近畿音声言語研究会 2008年


山岸智子

撥音の長さと感情的印象 ―首都圏方言話者と近畿方言話者―

要旨

 本稿では,撥音の持続時間が変化した場合,聞き手は感情的にどのような印象をもつのか,首都圏方言話者と近畿方言話者各10名を対象に,持続時間を0.5倍から2倍に伸縮させた合成音声による知覚調査を行った。作成した音声刺激を用いて,会話場面における話している言葉として聞くよう依頼した結果,両方言グループとも原音より短いと「つめたい口調」と感じる傾向があり,「つめたい口調」と答える人数は近畿グループの方がやや多かった。一方,撥音の持続時間が原音より長くなると「あたたかい口調」と感じる人は近畿グループでやや増えるが,首都圏グループではほとんど増えず,差が見られた。