『音声言語VII』近畿音声言語研究会 2016年


角道正佳

アイヌ語のわたり音挿入及び高母音消去

要旨  白石(1988)はアイヌ語高母音の半母音化とわたり音挿入が(i)規則に基づいた派生モデルでは適正制約が必要になることを指摘し、(ii)アクセントの情報を取り入れた最適性理論の分析を提案した。しかし(i)が複雑なのは2つの規則が相補分布を成す独立した環境指定の不完全な規則であるからである。さらに悪いことには示されている最終的な制約のランキングは最適な出力を選ぶことができない。環境指定を厳密にしたわたり音挿入及びそれに後続する高母音消去を設定するだけでアクセント情報に依存することなく現象を記述できる。