『音声言語VII』近畿音声言語研究会 2016年


田川恭識

方言音声によるパラ言語情報の表現と知覚―熊本方言の「不満」の音声に対する熊本方言話者と首都圏方言話者の知覚―

要旨

 音声によるパラ言語情報の表現およびその知覚に関して,これまで多くの研究成果が報告されている。しかしながらその多くが,東京方言もしくはそれを基盤とする共通語を対象としており,各地方言の音声を対象としたものは少ない。本研究では,熊本方言話者によって発話された「不満」の音声について音響的分析を行うとともに,それらの音声に対して熊本方言話者と首都圏方言話者がどのように知覚するかを検討した。発話音声の音響的パラメータと知覚の傾向について分析した結果,熊本方言の「不満」の音声に対して,東京方言話者と熊本方言話者では,異なる知覚の傾向があることが示唆された。