要旨

音声言語において丁寧に発音される際の形態や，書記言語において仮名で書き表される形態では促音ではないモーラが，自発的な音声言語においては時に促音のように発音されることがある（本稿では「〈促音〉化」と表現する）。本稿は，『日本語話し言葉コーパス』を使用して，自発的な〈標準語〉における〈促音〉化を計量的に概観したものである。その結果，変異現象としての〈促音〉化が特に生起しやすいモーラは「ク」であること，〈促音〉化が生起する傾向が認められるモーラは「キ」・「ツ」・「イ」であること，〈促音〉化には音韻論的な条件も関与していると考えられること，などを明らかにした。