『音声言語VI』近畿音声言語研究会 2008年


武田佳子

大阪方言における格助詞「から」の音調変化についての一考察

要旨

近年,大阪方言における格助詞「から」のアクセント変化が指摘されている。伝統方言では,無核語に後接する「から」は,その前接語と後接語の種類により3通りの音調が使い分けられていた。大阪市南部と南河内地区における,1936年から1992年生まれの10名の若年層と中高年層を調査したところ,無核語に後接する「から」の多くにHLの音調が使われていた。このHLの音調を持つ「から」の使用は,調査対象者においては年代差より個人差の方が大きく,この変化の始まりは,より上の世代である可能性が高い。この変化によって,3種類あった「から」の音調が1種類になり,使い分けの煩雑さと記憶の負担が軽減される結果となっている。