『音声言語VI』近畿音声言語研究会 2008年


白岩広行

福島方言の上昇下降調 ―文末イントネーションの意味記述―

要旨 

本稿では,福島方言を対象とし,文末の拍を一度直前より高くしてから急激に下降させるイントネーションパターンを上昇下降調と定義し(§1),その音声的な特徴をふまえたうえで(§2),母方言話者である筆者の内省をもとに基本的意味を次のように記述した(§4.1):命題で示された事態や当該の行動について,聞き手も同じ認識を持って当然という態度を示す。この基本的意味から,上昇下降調では話し手の認識が聞き手に強く主張されることになる。そして,上昇下降調は事態の甚だしさを含意しやすかったり(§4.3.1),目上の人間には使いにくかったり(§4.3.2)という語用論的な特性を持つ。また,そのような基本的意味は,文末詞との関わりからも認められる(§4.4)。